2017/05/26

麦茶の味

夏は麦茶ばかり飲んでいた。実家にいた頃。
何よりよく動いていた。
小学生の頃は、朝のラジオ体操に始まり、午後のプール。中学生になってからは、部活動のソフトテニス。高校は硬式テニス。決して運動が得意な方でなかったけど、ほんとーうによく動いていた。ただでさえ色黒なのに、さらに真っ黒黒だった。

これだけ動いているのだから、当然喉も渇く。麦茶ばかり飲んでた。麦茶が格別に美味しいと思ったこともなかったし、すごく好きな飲み物でもなかったけど、嫌いでもなかった。というか普通?好きとか嫌いとか思う隙もないくらい、普通の、当たり前な飲み物だった。
それに、うちには飲み物の選択肢があまりなかった。子どもが飲める冷たい飲み物は、麦茶か牛乳くらい。ジュースは普段あまり置いてなかった。

家族が多かったから、麦茶を作るのはとっても大きなやかん。やかんいっぱいにお湯を沸かして、麦茶のパックを入れて、沸々と煮だしていた、気がする。詳しくは知らない。お母さんやおばあちゃんは、1日に何度作っていたんだろう。夏の台所はいつも、麦茶を煮だしているときの、あの香ばしい匂いがしていた。

プールから帰ってきた後、部活動から帰ってきた後、疲れて昼寝して、起きて、おばあちゃんが「目覚ましになんかやろか」って声をかけてくれる。スイカだったり、メロンだったり、おばあちゃんがよく剥いてくれた。って言っても、メロンはマスクメロンのような高級メロンではなくて、家の畑でできるメロンで、スイカもそう。たくさん採れた。で、やっぱりその時も一緒に麦茶。

目覚ましに麦茶。お風呂上りに麦茶。ご飯と麦茶。当たり前だった。夏に麦茶は当たり前だった。あって当たり前だった。
昼寝から目覚めると、おばあちゃんが「なんかやろか」って言って、スイカとかメロンとかと一緒に麦茶を用意してくれるのも当たり前だった。特別美味しいとも、特別有り難いとも思わなかった気がする。

でも、今日、さっき。自分で沸々と煮だした麦茶を飲んで、はっとした。おっ、美味しい、そして懐かしい…。なんで今?かはよく分からないけど、今までの記憶が、味が、わたしの口のなかに降りてきた。


もう麦茶はあって当たり前じゃなくて、自分でやかんにお湯を沸かして、パックを入れて、煮だして、そうやって作らないとない。できない。
昼寝して起きても、「なんかやろか」って言ってくれるおばあちゃんはいない。自分で用意しないと出てこない。

だけど、麦茶を飲むと、今まで過ごしてきたあの時間が、あの想い出が、一緒に味わえる。
ああ、麦茶って美味しい。しみじみそう思った。

今年の夏も麦茶を作ろう。
やかんにお湯を沸かして、麦茶のパック入れて、煮だして、冷まして、麦茶を作ろう。




natsukinoki

2 件のコメント:

  1. もうすぐ夏ですね。

    冷や麦に麦茶、とかね。

    うちもお茶、毎日沸かしてます。 

    旅先で買ってきたお茶の葉で。

    お茶には土地の味がありますよね。

    その家の味がありますよね。

    いまぜき

    返信削除
    返信
    1. いまぜきくん、コメントありがとう!
      気が付かなったよーくすん。ごめんなさい。

      いまぜきくん家のご飯はいつも美味しそうだなーって、見ています。
      麦茶もさぞかし旨かろう…。

      削除