旅先1日目。
猫が死んだ。
直島で出会った野良猫。
漁村の猫だった。
漁村の猫だった。
強く逞しい顔をしていた。
だけど、その顔からは想像もできない撫で声を出してきて、私たちの近くに寄ってきた。
きっと観光客からよく餌をもらっていたのだろう。
旅路を急いでいた彼に促され、私はその猫と別れようとした。
出会って1分もしない出来事だった。
車に轢かれてしまった。
嫌な予感はした。
だけど、車も猫も気付くと思った。
大丈夫だと思った。
でも、違った。
猫は口から血を吐き、尿を出し、そして、動かなくなった。
生きていたものが、死ぬまで。
初めて目の当たりにした。
生き物は尿が漏れると、もうだめらしい。
雨がしとしとと降ってきた。
死ぬ前に猫は、勇ましい声を出して死んだ。
威嚇してるような声にも聞こえたけど、考えてみれば「まだ生きたい」という魂の雄叫びだったのかもしれない。
私は猫が死ぬ瞬間を見れなかった。
何もできなかった。
その日は、もう
ただただ、泣いていた。
私がどれだけ涙を流したって、どれだけ思い返したって、猫は戻ってこないのに。
でも、気付くと涙が出ていた。
人間は愚かだと思った。
自分が嫌になった。
彼に弁明してる自分。
自分自身に弁明してる自分。
命の重さとは?運命とは?
そんなこと、猫にはもう関係ない。
あの猫は、戻ってこない。
夕方、海には虹が出ていた。
それを見て、また泣いた。
私はその日、27歳になった。
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